「ストーリーのつくりかたとひろげかた」書評|現役ゲームプランナーによるレビュー

「ストーリーのつくりかたとひろげかた」の書評・感想について書いていきます。

この本はハリウッド式の映画シナリオ構成を基本としつつ、ゲームシナリオに応用するノウハウと、シナリオの今後の形について書かれた本です。

2021年4月初版と内容も新しく、分析されている作品も最近のものなので分かりやすいですし、最新のシナリオ構成理論もが紹介されている点が有意義な一冊です。

ゲームシナリオについては「ノベルゲーム」が中心ではありますが、実際にそのジャンルでヒット作を生み出してきた作者イシイジロウさんの未来を見据えた視点はとても斬新で、哲学書のようでもあります。

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著者:イシイジロウさんの略歴
チュンソフト在籍時に「3年B組金八先生 伝説の教壇に立て!」、「428~封鎖された渋谷で~」などヒット作の監督を務め、その後独立。
「文豪とアルケミスト」の世界観監修等、主にアドベンチャーゲームのジャンルに存在感が強く、最近では「アルティメット人狼」の主宰などリアルイベントでの活動も行われています。

目次

「ストーリーのつくりかたとひろげかた」書評

「ストーリーのつくりかたとひろげかた」はシナリオについての考え方が広がるきっかけを与えてくれる一冊です。

著者のイシイジロウさんはゲームシナリオだけでなく、人狼を題材にした決まったシナリオのない新しい形の舞台や、Zoomを使った先進的な舞台の仕掛けを考案するなどされている方であり、既存のシナリオの形に縛られない発想を持っています。

また、そういった応用的な話だけでなくハリウッド式のシナリオ構成理論が最新の作品例を交えながら紹介されており、初心者でも入りやすく学びの多い内容になっています。

シナリオについての視野が広がる

本書の後半の内容になりますが、僕が一番感銘を受けた部分なので最初に語らせてください。

シナリオや物語というのは当然決まった文章があり、誰がいつどこで読んでも同じ内容だと思っていましたし、これまでの小説や映画というメディアではそうでした。

ですがまずゲームという「プレイヤー」が存在するシナリオが登場したことにより、プレイヤーの選択によりシナリオが変化できるようになりました。

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選択肢によるルート分岐や、海外製オープンワールドゲームのようなフリーシナリオの作品も増えてきていますね。

では、これからのシナリオの形はどうなっていくのか。

「ストーリーのつくりかたとひろげかた」では今後のシナリオはコンピューターがAIによって自動生成するようになるだろうと語られています。

テーブルトークRPGの究極系のようなイメージをすると分かりやすいかと思いますが、面白いシナリオの理論に基づいて、プレイヤーがその瞬間に考えている思考に沿って、自動的にシナリオが生成されていったら・・・間違いなく最強のゲームになります。

もちろんこのような形が実現するまでにまだまだ時間はかかるでしょうが、すでに下記のような部分的な作業ではコンピューターによるシナリオ作成は実現されています。

  • シナリオの世界観や設定等、ゼロからイチを創る部分をコンピューターが担当
  • 構成をもとにしたテキストライティングをコンピューターが担当

僕がこの仕事を引退するまでにはあと30年ほど、その頃には0からシナリオの完成までをコンピューターだけで完結できる未来が現実になっている可能性が高いでしょう。

ゲームプランナーやシナリオライターとしての将来的な仕事のあり方は間違いなく変わってくるでしょうし、今から学び、準備しておくべき内容です。

「最新」の理論による、「最新」の作品分析

世界中でシナリオについての研究が最も進んでいるのは間違いなくハリウッド映画です。

投資されている金額がケタ違いで、商業的に成功しなければならないためヒットさせるためのシナリオ方程式が確立されています。

そんなハリウッド式最新のシナリオ構成理論について、「ストーリーのつくりかたとひろげかた」では実際のヒット作品を紐解きながら解説されています。

また、本自体が2021年4月発行とまだ新しいおかげで、例として扱っている作品も見たことのある作品が多く、もし見ていなくてもサブスクなどですぐに見ることができるのも利点といえるでしょう。

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「アイアンマン」や「君の名は。」など、すでに見ていてストーリーを思い出せる人も多いハズ。

ゲームジャンルはノベルゲーム寄り

作者自身が携わってきたヒット作がノベルゲーム中心であることもあり、後半の内容はゲームシナリオの中でも特にノベルゲーム寄りのものになっています。

そのためRPGのようなシナリオにシステム面(戦闘やダンジョン攻略など)も影響してくるジャンルの話はほとんど出てきません。

RPGのシナリオを書きたい人にとっては、そこはややネックになるかもしれません。

とはいえ、シナリオそのものがゲーム性であるノベルゲームのシナリオ理論を理解していれば、ノベルゲームよりはシナリオの比重が低いRPGのシナリオに応用することは可能ですので、参考になる面は多いはずです。

「ストーリーのつくりかたとひろげかた」要約

「ストーリーのつくりかたとひろげかた」は全4章で構成されています。

  1. ハリウッドのシナリオ技法
  2. 感情曲線についての解説
  3. ノベルゲームに絡めたミステリーの解説
  4. これからのシナリオの形

第1章 ハリウッド式のシナリオ「構成」

ハリウッドで確立されている「三幕構成」の理論を中心にシナリオの構成について解説されています。

日本風にいうと「序破急」というやつですね。

似たものに「起承転結」という四幕構成の理論がありますが、現在では映画やゲームといったジャンルでのシナリオにおいては三幕構成のほうが適していると解説されています。

ただし本によっては「起承転結」で解説しているものも多く、あくまで「この本は」3幕構成であるということです。色々と勉強して、自分のスタイルを見つけましょう。

また、三幕構成をさらに細分化した「15のビート」という物語展開についても具体例付きで解説されており、シナリオのテンプレと呼んでもいいくらいに型が出来上がっています。

この型を知った上で、実際に自分で映画を見ながらシナリオを分析してみるだけでも非常に勉強になります。

第2章 感情移入と感情曲線

第2章ではまず、「感情移入」とはどういうものなのかについて語られています。

僕なりに超簡単に解説すると、感情移入とは「自分ではしないような行動を取るキャラクター」について、物語の冒頭でキャラクター性を説明し、それを一貫することで視聴者・プレイヤーは納得し感情移入が生まれるということです。

そうして感情移入したキャラクターの描く感情の浮き沈みを縦軸、シナリオの進行を横軸にして描いた線が「感情曲線」になります。

キャラクターにとってプラスな感情(嬉しい・テンションアップ)ならばグラフは上昇、マイナスな感情(悲しい、怒り)ならグラフは下降します。

感情曲線も一つのシナリオの「型」のようなもので、6種類に分類されます。

  • 上昇型:シナリオの最初から最後まで一貫して感情が上がっていく
  • 下降型:シナリオの最初から最後まで一貫して感情が下がっていく
  • 上昇→下降型:一旦上がって後半で落ちていく(天国から地獄)
  • 下降→上昇型:一旦下がって後半で上げる(困難を乗り越えハッピーエンド)
  • 上昇→下降→上昇
  • 下降→上昇→下降

また、この型を組み合わせて、「上昇→下降→上昇→下降→上昇」のようなパターンも存在します。

第1章で触れた三幕構成や15のビートを元に、この感情曲線を意識したシナリオの構成を描くことが面白いシナリオへの筋道と言えます。

第3章 ミステリーはエンタメの要石

第3章では、もともとは小説や映画などの一つのジャンルであった「ミステリー」が、現在のエンタメではジャンルに関わらず欠かせない要素になっていることについて語られています。

ゲームだけでなく、映画やアニメ、さらにはリアル脱出ゲームのようなリアルイベントでも「謎解き」という要素が全く含まれていないものを探すほうが難しいくらいの位置付けになっています。

ミステリーの成り立ちから現在までの変遷を経て、作者であるイシイジロウさんが脚本を担当したZoomを使用した舞台を例として、ミステリーと現代エンタメの新しいカタチを解説されています。

第4章 AIがリアルタイムに紡ぐシナリオの未来

一方、第4章ではノベルゲームを中心にプレイヤーがシナリオの展開を左右するゲーム独自のシナリオ構成から、AIがシナリオを構築する未来の話までが語られています。

シナリオの形の移り変わりとしては、下記のような順になります。

  1. 作者が書いた固定のシナリオ(小説・映画など)
  2. プレイヤーの選択により分岐するシナリオ(ゲーム)
  3. プレイヤーや視聴者の感覚に呼応して、AIがリアルタイムに描き出すシナリオ(未来)

ただこのストーリーテリングの未来の形は、実は「物語」が生まれた原初の形を再現しているとも言えます。

文字がない時代の原初の物語は口伝によって行われ、また古代に生まれた舞台における劇は固定された脚本ではなく、客の反応によって都度物語が変化していたそうです。

技術の進歩によって目指される先が一番最初のシナリオの形というのが皮肉めいて面白いですが、これが実現すればゲームプランナーやシナリオライターがシナリオ制作に携わる方法は根本から変わる必要があるでしょう。

ゲームプランナーとしてこの変化への対応は近い将来に訪れる話として、今から学び、イメージしておくべきです。

「シナリオ」そのものを深く学びたいなら「ストーリーのつくりかたとひろげかた」を読むべし!

次のことを学びたい人には「ストーリーのつくりかたとひろげかた」がバッチリ当てはまります。

  • 最新のシナリオ構成理論を学びたい
  • 将来を見越した「シナリオ」そのものについての知見を深めたい

シナリオ構成のノウハウとして、ハリウッド式の三幕構成や15のビート、感情曲線の理論は非常に勉強になりますし、未来のシナリオの話もプランナーとしてシナリオについての考え方を広げるきっかけになります。

新書1冊で幅広い範囲についての学びを得ることができますので、ゲームシナリオの基本を見に付けたあとの応用編の1冊として非常にオススメです。

書籍情報

【書籍名】ストーリーのつくりかたとひろげかた 大ヒット作品を生み出す物語の黄金律
【著者名】イシイジロウ
【出版社】星海社
【出版日】2021年4月21日初版
【頁数】249頁
【目次】

第1章 リライティングと三章構成
第2章 主人公と感情曲線
第1章 ミステリーとミステリーゲーム
第1章 ゲームの物語作りの最先端とその未来

(参考)シナリオのおすすめ本は「ゲームシナリオの勉強におすすめ本4選!」の記事にまとめていますので合わせて読んでみてください。

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