「考具」の書評・感想について書いていきます。
「考具」は直接的にゲーム制作に関わることを書いている本ではありません。
ですが業界に関わらず何かしらの企画やアイデア、創作に関わる仕事には必ず役に立つ情報が詰まっています。
アイデアを出すためのツール・手法を紹介するから気に入ったものを使ってね!って感じの本です。笑
僕自身も「考具」に登場する「マインドマップ」や「マンダラート」、「ちょいメモ」などを活用しています。

当ブログでは現役ゲームプランナー、ディレクターの僕SHIMAがゲームプランナーを目指す人に役立つ情報を発信しています。
著者:加藤昌治さんの略歴
1994年に博報堂に入社され、情報戦略・企画立案を担当されている方です。
「考具」の他にもアイデアに関する本を多数出版されていますが、特に「考具」は2003年初版とそれなりに古い本でありながら未だにAmazonの「ビジネス企画」ランキングで20位以内に位置するなど、長くクリエイターに愛されています。
「考具」書評
「考具」というタイトルは「考えるための道具」という意味だそうで、考える(=アイデアを出す)道具(ツールや考え方)を教えてくれる本です。
後ほど要約の項目でお伝えしますが、かなりの数の「考具」が紹介されています。
全部を完璧に使いこなすのは難しいと思いますが、「自分にはこれが合いそう」と思える考具がきっと見つかるはずです。
堅苦しさがないのが◎


「考具」を読んでいてまず感じるのが、2003年初版とそれなりに古い本であるにも関わらず、古臭さが全くないことです。
内容もポップで読みやすくスラスラ読んでいくことができます。
また、「新しいアイデアは既存のアイデアの組み合わせである」と最初に定義してくれていることで「アイデアを出す」という産みの苦しみを連想しそうな作業へのハードルを下げているのもありがたいです。
実際、記憶に新しいところでの革新的なヒット作を例に取っても
- スプラトゥーン:FPS×陣取り
- マインクラフト:積み木(レゴ)×アクション
- Among Us:人狼×パズル×ゲーム的なUI
こんな感じで既存のアイデアの組み合わせとして見ることができるかなと思います。
「テレビゲーム」が生まれてから60年以上経ち、「0から生まれる完全に独創的なアイデア」というものはほぼ出尽くしていると言っていいでしょう。
多分それを今から考えることができたら、歴史に名を残すような有名製作者になれます。笑
それよりももっとリラックスして「今までにないアイデアの組み合わせを探せばいいのか~」と考えるのが現実的なアイデアの見つけ方と言えます。



以前楽天の三木谷社長のお話を伺った際にも「イノベーションは既存のアイデアの組み合わせで起こる」と同じ趣旨の話をされていたのを思い出しました。
「読む」より「使う」に重点を置く本


「考具」は本を読んで内容を理解するだけでなく、実際に使ってこそ意味があるものです。
工具や農具、筆記具などもただ持っているだけで使わなかったら何の意味もないですよね。
読み進めるなかで「これは」と思えるものがあったらぜひすぐに使ってみてください。
合わなければ他のを試してみればいいですし、必ず自分に合う考具が見つかるはずです。



本が書かれてから年月が経っているので、今はほとんどのこと考具がPCやスマホ・タブレットで整理できるのもGood!
「考具」要約


ここからは「考具」で紹介されている具体的なアイデアの考え方について、簡単にですが紹介していきます。
アイデアは既存の組み合わせ。企画は実現性のあるアイデア。


まず、「アイデア」と「企画」とはどういったもので、何が違うのかについて。
- アイデア:既存の物事やアイデアの組み合わせ
- 企画:アイデアの中でも実現性があるもの
このように説明されています。
逆に言えば、「アイデア」は実現性がなくていいということです。
実現するかしないかはともかく、アイデアはとにかく数を出す。質より量で勝負です。
この考えに沿って、「考具」では最終的に「企画」を出すまでのステップを次の流れで解説しています。
- アイデアの種を集める
- アイデアを並べ、組み合わせる
- アイデアを企画にする
次の項目から、この1~3をするための「考具」についてご紹介します。
アイデアの種を集める6つの考具


「アイデアは質より量」と先ほど書きましたが、量を出すためにはそれだけの引き出しをストックしておく必要があります。
そのためのアイデアの種を集める、情報収集のための考具が6つ挙げられています。
ここでは触りだけ紹介しますので、使ってみたいものがあれば詳しくは「考具」を読んでみてください。
- カラーバス
- 聞き耳を立てる
- ちょいメモ
- 七色いんこ
- フォトリーディング
- 新聞記者
①カラーバス


何か色を決めて、例えば「赤」なら街を歩きながら「赤いもの」に注目します。
何か注目するものを決めていることで、普段何気なくスルーしていたことに気づくことができ、自分の新しいストックが生まれることがあります。
②聞き耳を立てる


読んで字の如く、街の人やファミレスなどで他人の会話をそれとなく聴きます。
特に自分の顧客となるような層が訪れる場所で行うと役立つ情報が手に入ります。
ゲームなら対象プレイヤーのいそうなところ・・・学生が対象なら通学路やゲーセンなどでしょうか。
③ちょいメモ


気に止まったことや面白いものはメモにとるのがポイントです。
見返すことに本質があるのでなく、「メモにとる」というアウトプットが本質で、必要なときにその引き出しにたどり着きやすくなります。
④七色いんこ


顧客のニーズを知るために、顧客を演じてみます。
例えば子供が顧客なら目線を低く歩いてみるなど。
そうすることで普段気づかなかった視点に気がつくがことができます。
⑤フォトリーディング


速読術。文字を読むのではなく、ページを絵として1ページ1秒くらいで「見る」のがポイントです。
右脳で記憶する「らしい」んですが、少なくとも僕は左脳人間なのでこれは昔試したけど全くハマりませんでした。笑
できる人がいたら正直羨ましい。
⑥新聞記者


新聞記者になったつもりで実際に取材をします。
個人的に興味のないテーマでも掘り下げていくテクニックです。
アイデアを広げるための7つの考具


続いて、いざ何か企画を考える必要があるときにまず「アイデアの数を出し、組み合わせる」ための考具です。
これらの考具を使ってたくさんのアイデアを出し、どれかとどれかを組み合わせることで新しい・面白いものが生まれないか?と探していきます。
7つの考具が挙げられていますので、これも触りだけ紹介します。
- アイデアスケッチ
- ポストイット
- マンダラート
- マインドマップ
- 連想ゲーム
- オズボーンのチェックリスト
- ブレーンストーミング
①アイデアスケッチ


企画に関連するアイデアを文字情報だけでなく「絵的に」書いていきます。
最低30案を目標に、数で勝負。
却下しない、似たアイデアもOKというおおらかさがポイントです。
②ポストイット


①のアイデアスケッチとも重なりますが、同じようなことを「ポストイット」(束になっているメモに粘着テープが付いているアレ)に書いて貼っていきます。
1枚1ネタ。もったいない精神はNGです。
後で並べ替えでき、考えを整理するのに役立ちます。
③マンダラート


3×3の9マスの四角を書き、真ん中のマスにテーマを書きます。
ゲームなら例えば「RPG」とか「パズル」とかざっくりしたものから始めてもいいし、もっと具体的なテーマでもいいです。
周りの8マスに関連するアイデアを書き、次はそのアイデアを真ん中の箱に置いたマンダラートを書いていきます。
8マス埋めるのが絶対で、これにより8×8の64ものアイデアを出すことができます。
④マインドマップ


WordやEXCELのような整理された表ではなく、中心にあるテーマから枝葉のように関連するキーワードを繋げていく記述法です。
書いていくことで思考も整理できるのがポイントです。
実はこのブログも記載前にマインドマップに書く内容を簡単にまとめてから記事を書いています。
⑤連想ゲーム


企画テーマからスタートして、「○○といったら△△、△△といったら□□、□□といったら…」と次々に連想していきます。
昭和世代には「マジカルバナナ」といえば分かりやすいかも。
突拍子もないアイデアがどんどん出てきますがが、それだけ頭が柔らかくなっている証拠なのでむしろそれを歓迎しましょう。
⑥オズボーンのチェックリスト


どうしてもアイデアに詰まったときに使う裏ワザ的な9か条です。
- 転用したら?
- 応用したら?
- 変更したら?
- 拡大したら?
- 縮小したら?
- 代用したら?
- 置き換えしたら?
- 逆転したら?
- 結合したら?
すでに出したアイデアをこの質問に当てはめてみて、別のアイデアにすることができないか考えてみましょう。
⑦ブレーンストーミング


チームでアイデア出しをするときに有効な手法です。
- 他人を批判しない
- 自由奔放に意見を出す
- 他人のアイデアに便乗する
をルールにどんどん意見を出します。
アイデアを企画にまとめる方法


最後に、ここまでで出したアイデアを、実現性のある「企画」にまとめる方法です。
あえて「考具」ではなく「方法」と記載したのは、企画のまとめ方に関してはこれまでのようなツール的な内容ではなく、テンプレのようなこうやるといいという流れが紹介されていたためです。
- 5W1H
- タイトル付け
- ビジュアライズ
- マンダラート
- 企画書にまとめる
①5W1H


まず、企画を5W1Hのフォーマットに整理します。
ゲームに置き換えるならこんなところでしょうか。
- Who:プレイヤーは誰か
- What:何をするゲームか
- When:どのくらいのプレイ時間か
- Where:ハードは何か。据え置き?携帯機?スマホ?PC?
- Why:なぜこの企画なのか(狙いなど)
- How:具体的な世界観やゲーム性
②タイトル付け


企画にタイトルを付けます。
タイトルを見ただけで企画内容がイメージできる、具体性のあるものがいいです。
「商品名」になるタイトルまでここで決める必要はないですが、例えば「桃太郎電鉄」なんてもとになった「桃太郎伝説」とのシャレも効かせつつ内容も一発で伝わるすごいタイトルだと思います。
③ビジュアライズ


企画が実際に行われているイメージを絵に起こしてみます。
ゲームなら実際のプレイ映像のイメージです。
自分で絵を描くことができなければ、既存の絵で近いイメージのものを探すのもOKです。
④マンダラート


①の5W1Hをマンダラートに入れ込みます。
真ん中のマスに企画名、周りのマスに5W1Hを書き、さらにその5W1Hを中心にした9マスを展開し、企画の具体的な中身を詰めていきます。
⑤企画書にまとめる


いよいよ企画書にまとめます。
ダラダラと文章で書く必要はなく、ざっと見て内容が分かるのがベストです。
(上司は細かくなんて見てくれない)
意識するのは次の2つ。
- 原稿の構成を意識する(5W1Hを活用)
- 読んだ人が絵をイメージできるように
ここまでいけば、一段落です!
アイデアの出し方を知りたいなら「考具」を読むべし!


ここまで紹介してきたように、「考具」には次のような考え方がまとめられています。
- アイデアの種になる情報を集める考具
- アイデアを出し、組み合わせて新しいアイデア作るための考具
- アイデアを企画にまとめる方法
細かくはその他にも書かれている内容はあるのですが、本の文量的にはほとんどが上記の①~③のものです。
こういったことから、次の条件に当てはまるならこの本を読んで役立つ「考具」を見つけられるでしょう。
- 何かしらの企画に携わっている
- アイデアの出し方が分からない
- 自分には創造力がない
僕自身も創造力が乏しいことが悩みでしたが、そんな人間でも難しく考える必要はないんだ!ということが分かるだけでも「考具」を読む価値はあると思いますよ。
書籍情報


【書籍名】考具―考えるための道具、持っていますか?
【著者名】加藤昌治
【出版社】CCCメディアハウス
【出版日】2003年4月初版
【頁数】239頁
【目次】
序章 広告会社でも最初は「ただの人」。今からでも全く遅くない!
第1章 「アイデア」「企画」を考えるとは、何をすることなんだろうか?
第2章 どうしたら“必要な情報”が入ってくるのか?―情報が頭に入ってくる考具
第3章 展開・展開・展開!―アイデアが拡がる考具
第4章 企画=アイデアの四則演算!―アイデアを企画に収束させる考具
第5章 時にはスパイスを効かす!―行き詰まったときのアドバイス
第6章 あなただけの『考具』を見つけよう!
終章 頭の動き方がシステム化することこそ、本当の『考具』かもしれない
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