「勝てるデザイン」書評|現役ゲームプランナーによるレビュー

「勝てるデザイン」の書評・感想について書いていきます。

プランナーを目指す人であっても、デザインについての最低限の知識は必要で、「勝てるデザイン」はゲームで使用するグラフィックを発注する際のデザインの「企画」を学びたい人におすすめの本です。

ゲームで使われるグラフィックの作成はまずプランナーが企画・発注することからスタートします。

また、デザイナーとしての独立に関する話も詳細に解説されているので将来的にゲーム製作者としての独立や、個人での副業などを視野に入れている人にも役に立つはずです。

SHIMA

当ブログでは現役ゲームプランナー、ディレクターの僕SHIMAがゲームプランナーを目指す人に役立つ情報を発信しています。

著者:前田高志さんの略歴
任天堂でデザイナーとして15年務めた後に独立。専門学校HALや大阪芸術大学で非常勤講師を務めつつ、「前田デザイン室」というコミュニティを運営。

デザイン雑誌や書籍などオリジナルのクリエイティブ制作とともに、様々なクライアント企業のロゴデザインを手掛け、中でも「レディオブック」がフェラーリと契約を結ぶきっかけとなるデザインの制作など、そのデザインは世界的に評価されています。

目次

「勝てるデザイン」書評

まず最初にお伝えしておくと、この本は「勝てるデザイン」というタイトルになっていますが、デザインの芸術面におけるノウハウを述べている本ではありません

構図や色づかいなど芸術面を学びたい方は、別の本を選んだほうがいいです。

デザインには「思考」と「造形」、言い換えれば「企画」と「アート」の2つの面があると解説されていますが、「勝てるデザイン」で解説されているのは主に「思考」(企画)のほうの話になります。

デザイン寄りのビジネス書

上記のとおり、「勝てるデザイン」はアートについてではなくデザインの「企画」についての解説が書かれています。

そのため、ゲームプランナーというグラフィックを企画し、発注する仕事に活かせる内容が非常に多くなっています。

SHIMA

ゲームプランナーはどんなグラフィックにしたいのか企画し、グラフィッカーに依頼するのも仕事の一つです。

またそれだけでなく、デザイナーとして独立してから今の成功に至るまでの思考過程が書かれており、これは別の分野でもそのまま使える知識です。

「デザイナーのための本」というよりは広い分野で読まれるべきビジネス書と言っていいでしょう。

デザイン思考はゲーム企画と似ている

読み進める中で、デザインとゲームには共通するものが多いことに気付きます。

「勝てるデザイン」を作るには5つの条件があると最初に明示されますが、これもゲームに通ずるものがあるなと。

  • 捨てられないデザイン
  • 興味を奪うデザイン
  • ならではのデザイン
  • ポリシーがあるデザイン
  • 一撃で分かるデザイン

ゲームもデザインも、人が生きていく上で役に立つものではないが、「人生を楽しく豊かにするもの」という意味では同じものです。

こうした本質的には無価値なものを、いかに価値のあるもの・意味のあるものに変えられるかは企画次第です。

その点で、「勝てるデザイン」には優れたデザイン企画の思考過程が1から10まで公開されており、ゲームの企画にも活かせるアイディアが非常に多かったです。

何にでも「遊び」を取り入れる

「勝てるデザイン」の著者である前田高志さんは「遊び」を取り入れる天才だと思います。

それは「デザインの中に遊びを取り入れる」という意味だけではなく、仕事やアイディアに遊びを取り入れるのが非常に上手いんですね。

例えばこんな感じ。

  • 他人のアイディアでいいなと思ったデザインのエッセンスを「必殺技名」にして自分の引き出しに入れておく
  • みんなで雑誌を制作する過程で、夜通し作業する必要が発生。そのままマイナスイメージで終わらせず「朝までがんばらNight」と名付けることでチームに前向きな雰囲気を作る

この「何でも遊びにする」という思考はゲームプランナーとして仕事をするのにももちろん活かせますし、日常生活にも使えるものです。

例えば子供に片付けを覚えさせたいときに、「片付けがゲームに」なるよう工夫すれば子供も取り組んでくれるようになるんじゃないでしょうか。

文中では「童心を忘れない」という言葉で表現されていますが、どんなことに対しても遊びの要素を取り入れることでスキルとしての定着やモチベーションの向上に繋がるはずです。

SHIMA

何でも遊びにする柔軟な思考が染み付けば、「ゲームの企画」にも間違いなく生きてきます。

一点だけ注意!本の特典が第1刷だけ違う

ゲームプランナーには直接的には影響はないかもしれませんが、念の為。

「勝てるデザイン」には購入特典が付いているんですがその内容が第1刷だけ異なるものになっています。

第1刷:オリジナルフォント
第2刷以降:対談音源

デザインを仕事にしているわけではないため個人的には第2刷以降の特典のほうがおすすめで、おそらく今オンラインショップで購入したらほぼ第2刷以降のものが届くはずです。

「勝てるデザイン」要約

「勝てるデザイン」は全3章で構成されていて、ステップアップ的に内容が分かれています。

第1章:初心者向け
第2章:中級者以上向け
第3章:独立に向けて

この意味で、ゲームプランナーには第1~2章が特におすすめです。

第1章:デザインの基本を解説

第1章では、デザインをする上でベースとなる知識や哲学、技術が解説されています。

  • 優れたデザインとは「幸せになる人の数が多い」ものである
  • デザインのエッセンスを「必殺技」として自分にストックする
  • デザインにおける「文字」の重要性
  • 「遊び」を取り入れる仕事術
  • デザインの推敲方法

などなど。

内容的には専門的なレベルではなくデザイン畑ではない僕でもスラスラ読み進められる難易度です。

日常的に触れている「デザイン」について広い範囲を大まかに学ぶことができ、興味を切らさずに読み進めることができます。

特に感銘を受けたのが、書評の項目でも触れましたが仕事に「遊び」を取り入れる姿勢です。

こうして僕たちは、相談会でも徹夜でも、すべて「ゲーム化」していきました。(中略)
全部、楽しんじゃえばいいじゃん、と。
これは別に精神面だけじゃなく、実際の作業効率を上げることにも寄与しました。

第1章 デザインは何のためにあるのか 10童心を育てよう

第2章:そのクライアントだからこそのコンセプトが肝

デザインには「思考(企画)」と「造形(アート)」という側面がありますが、第2章では特にその「思考(企画)」の面についての過程が詳細に語られます。

※「造形」つまりアートについては「勝てるデザイン」ではほとんど解説はありませんが、前書きを読む限りこれは意識してそういう構成にされているものと思われます。

クライアントのために作成した数多くの企業ロゴなどを中心に、なぜこのデザインになったのか、結論に至るまでの思考過程が没デザインなども交えながら紹介されています。

特に「そのクライアントだからこそ」という視点について、相手の会社の歴史や大事にしている文化などをデザインの中にいかに落とし込んで面白いデザインになるよう企画したのか、実例とともに知ることができます。

「アート」ではなく「企画」についての考え方なので、ゲームプランナーの仕事と重なって直接役に立つ部分も多く、別分野での再現性も高い考え方だと言えます。

第3章:独立して成功するための戦略

第3章は毛色が少し異なり、主に著者である前田高志さんが独立してデザイナーとして成功するまでに行ってきた過程と戦略について紹介されています。

  • ブログやSNSでの情報発信が成功につながった
  • 報酬が0円でもお金以上に価値のある、デザインにおける「投資」
  • コミュニティを「デザイン」する

など。

第3章は特に将来的に独立を考えている方や、独立までいかなくとも副業で自分自身で稼いでいきたいと考えている方には参考になる内容になっています。

デザインの企画を学ぶなら「勝てるデザイン」を読むべし!

この条件にピンと来たら「勝てるデザイン」を読んで間違いはないです。

  • 「デザインの企画」の考え方を知りたい
  • 将来的に独立や副業を考えている

ゲームプランナーという仕事は、自分で絵を描くことはほとんどありません。

ですが、ゲームに必要なグラフィックを考えて、どんな目的で、どういう絵が欲しいのかをグラフィッカーに発注する必要があります。

つまり、グラフィックについての「企画」そのものと言っていいでしょう。

「勝てるデザイン」からはその肝となる考え方を学ぶことができますので、ゲームプランナーを目指しているがデザインについての考え方が全く分からないという人はぜひ手にとってみてください。

書籍情報

【書籍名】勝てるデザイン 人生を変える力
【著者名】前田高志
【出版社】幻冬舎
【出版日】2021年3月15日
【頁数】340頁+ワーク47頁
【目次】

第1章 デザインは何のためにあるのか 駆け出しデザイナー向け

1 あの日、フェラーリは僕のデザインを愛した
2 その企画で何人を幸せにできるか
3 任天堂の会社案内はすごい!
4 デザインの必殺技を増やせ
5 スピードが命!Illustrator時短術3選
6 「デザインは文字が9割」である!勝負フォント3選
7 「デザインは文字が9割」ではない!?
8 デッサンがクリエイターを作る
9 良いパートナーとつきあえ:髪と印刷の話
10 童心を育てよう
11 あなたが一番嫌いな人が作ったデザインとして見よ
12 課題「色だけで感じさせよう」
13 ダサいデザインはなぜ生まれるのか?
コラム 「パラレルワールド」を想像してみよう!

第2章 「ならでは」のデザインをするために 中堅デザイナー向け

14 「ならでは」があるデザインが原則
15 フェチを極めろ
16 裏側にこそ勝利はある
17 あなたのデザイナーとしての喜びは何?
18 小さな失敗体験で自分を諦めろ
コラム ヒューマンスケールで造形視力を鍛えよう
19 プレゼンはラブレター
20 デザインする前にプレゼンを考えよ
21 待ってたら作りたいものは一生作れない
22 教えることも、デザインだ
23 コンセプトとは「印ろう」のことだ
24 アートディレクターはボウリングレーンの壁となれ
25 うまくいっている時こそ次を考えろ
26 それは、デザイン案ではない。「キヨ地下」ロゴを作る中で考えたこと

第3章 興味を奪え 選ばれるデザイナーになるために

27 フィーの理想は「100万円以上か0円」
28 デザイナーのリアル転職活動~good design company編~
29 デザイナーのリアル転職活動~GRAPH編~
30 認知症の父を見て人生の短さを知った
31 大企業の看板が外れたデザイナーが自分の名前で稼げるようになるまで
32 選ばれる人になるには? 2人の編集者との出会い
33 時代を読んで先手を取る
34 興味を奪え
35 仕事は作るもの、お金は使うもの
36 ハッピーループを回していこう
37 デザインはアウフヘーベンだ
38 気になることをやり続ければコンテンツになる
39 純粋にものづくりを楽しむためには
40 居場所をデザインする
41 デザインは、デザイナーだけのものではない

おわりに
勝てるデザインワーク

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